三姉妹父さんのマネレッジ

Moneyにおけるknowledgeを貯めよう

『21世紀の「女の子」の親たちへ』を読んで

こちらは教育ジャーナリストであられるおおたとしまさ氏の著作。著者のお名前は中学受験に関する記事などで度々目にすることがありました。表題のターゲットなる三姉妹父さんとして、副題である「女性校の先生たちからのアドバイス」というのが気になって手に取ってみましたので、その引用と備忘です。

能力が高い女性は嫌われる?
コロンビア大学ビジネススクールのフランク・フリン教授とニューヨーク大学のキャメロン・アンダーソン教授が2003年に行った実験です。実在する女性ベンチャーキャピタリストのハイディ・ロイゼンの、「強烈な個性の持ち主で……幅広い人脈を活用して成功した」という物語を2つのグループの学生に読ませました。ただし片方のグループには「ハイディ」の名前を「ハワード」という男性名に変えて読ませたのです。すると学生たちは、ハイディとハワードの能力に対して同じように敬意を払ったにもかかわらず、「ハイディは自己主張が激しく自分勝手」であるとして、同僚としてはハワードのほうを好ましいと見なしたのです。

ここで挙げられたハイディ・ロイゼンさんというのは、スタンフォードMBA卒で1996から97年にかけてアップル社の副社長を務められ方とのこと。なお、これは以下の意見を補足するバイアス例として提示されたものですが、同じ物語でも男性か女性かによって受け止められ方が異なるというのは、意識しないと見えてきませんが、現実としては存在しており、その結果以下のような意見になることも否めないかもしれないと思いました。

女性は職場において、女性としての好感をもたれたながら男性以上の結果も出さなければならない状況にあるということです。

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道徳よりも人権教育

「人権」は近代以降に発見された概念です。すべてのひとが人権をもっている。基本的人権と表現してもいいでしょう。

道徳や倫理が文化依存的だったり相対的だったりするのに対し、人権は文化的背景にも人種にも国籍にも障害の有無にももちろん性別にも影響されない絶対的な価値です。

こちらについては、最近別のところでも学校で教えるべきは道徳ではなく人権であるべきだという主張を目にしました。確かに道徳というと、だれそれの気持ちを考えてみましょうというイメージがあり、それがムラ社会に忖度する行動を促進してしまう面もあるように思われます。そうではなく、侵してはならない人権としてこういうものがあるという方が適切に教えられるものなのではないかと思いました。

偏差値最強カップルが陥るジレンマ

優秀な女性が最強のパートナーをもつことによって、自分のキャリアをあとまわしにしなければならなくなることがあるというのは皮肉です。

これは、どちらもハイキャリアな場合と、もともと収入差が大きい場合とでは、仕事と家庭とのバランスを取る判断に対する犠牲が前者の方が大きくなるということのようです。そういう傾向はあるような気がします。

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日本の教育は男の子向きにつくられている

「男の子は多少突き放すくらいの距離感が良いといわれていますが、女の子は共感して寄り添って安心感を与えてあげないとなかなか力を発揮できない傾向があると思います。大人数の前で先生が講義して『あとは自分でやれ』みたいに突き放すような従来の日本型の教育では、女の子がついてこない」

だとすると、これからは女子も男子と伍していかなければいけないと考えた父親が、自分が育てられた感覚で娘を厳しく育てようとすると、娘の可能性をつぶしてしまうおそれがあるということです。

「よくスパイラル型のカリキュラムってありますよね。それぞれの単元を完全に理解していなくてもとりあえず先に進んで、何度も繰り返すことで定着させていくという。でもこれも女の子には全然だめです。……ほとんどの子か、きちんきちんと段階を踏まえて、ちょっと手を差し伸べてあげるくらいがいちばん伸びる」

「女の子は目標が定まるとその過程をきっちり仕上げることを好みます。だから不完全だとなかなか前に進みません」」

父親が自分が育てられた感覚で娘を厳しく育てようとするというのは、多分にあるような気がしており見直さねばと思ったところです。スパイラル型の教育がなされているのは大手塾ですかね。私は男ですが理解しないまま進みたくなくて、進めなくなるところはあったような気がします。

ノートルダム清心学園の元理事長でカトリックのシスターであった渡辺和子さんが残した有名な言葉に「置かれた場所で咲きなさい」があります。……その言葉には続きがあることを教えてくれました。「置かれた場所で咲きなさい。どうしても咲けないときには、無理に咲かなくてもいい。その代わり、下へ下へと降ろして、根を張るものです。」

渡辺先生は生前、むしろ後半部分を、中高生にはくり返し伝えていたそうです。

置かれた場所での他にも、自分の今いる場所でみたいな言い回しでよく聞く言葉ですが、続きがあったことは初めて知りました。咲くというのはタイミングもあり難しいときもありますし、力強く咲くためにはまずは根を張るということの方が、若い時には必要な言葉である気がします。

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父親が気をつけるべき点は何でしょうか。

「父親は、ただただ心配になる。これなんですよ。それと、なんとか答えを見つけてあげたいと思ってしまう」

何か問題が起こると、男性は「問題解決モード」のスイッチが入ってしまい、目の前の相手の気持ちが見えなくなる場合が多い。会社での役割も影響しているのでしょうか。だとしたら管理職についている母親にも同様の傾向が見られるかもしれません。

私自身は過保護のつもりはないのですが、でも多分心配になっているのでしょうね。そして「問題解決」モードになるのもあるあるですね。会社では問題を解決することが評価されることに繋がりますし、どんどん解決していかないと次々に押し寄せる問題にやられてしまうので、会社の影響みたいなものもあるのかもしれません。だとするとFIREを達成すればスイッチも入りにくくなるのでしょうか。