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『幸せになる勇気』を読んで

こちらは日本を代表するアドラー心理学の専門家であられる岸見一郎氏と、古賀史健氏によるベストセラーにもなった前作『嫌われる勇気』の二部作目であり、完結編となるもの。

『嫌われる勇気』は発刊時に読んだものの、本作についてはまだ手に取っていなかったためそれを読んでの引用メモです。

哲人が示した、三角柱に折られた紙。青年の位置から見えるのは、三面のうち二面だけだった。そこには「悪いあの人」という言葉、そして「かわいそうなわたし」という言葉が、それぞれ書かれている。哲人によると、思い悩んだ人間が訴えるのは、けっきょくこのいずれかなのだという。そして哲人は、その細い指でゆっくりと三角柱を回転させ、最後の一面に書かれた言葉を提示した。青年の心臓をえぐるような、その言葉を。

P.72

最後の一面に書かれている言葉は「これからどうするか」でした。トラウマを否定するアドラー心理学では過去ではなく未来について語ることを是としているようです。自身が語る時どの話をしているのかを意識することでより建設的な人生を送れるようになるような気がします。

哲人 子どもたちの問題行動を前にしたとき、親や教育者はなにをすべきなのか?アドラーは「裁判官の立場を放棄せよ」と語っています。あなたは裁きを下す特権など与えられていない。法と秩序を守るのは、あなたの仕事ではないのです。

青年 では、なにをしろというのです?

哲人 いまあなたが守るべきは方でも秩序でもなく「目の前の子ども」、問題行動を起こした子どもです。教育者とはカウンセラーであり、カウンセリングとは「再教育」である。最初にお話ししましたね?カウンセラーが銃を構えるなど、おかしな話でしょう。

P.115-116

銃を構えながら「再教育」をしようとしていないか、改めて意識する必要がありそうです。

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哲人 そうなります。だからこそ、教育する立場にある人間、そして組織の運営を任されたリーダーは、常に「自立」という目標を掲げておかねばならないのです。

青年 ……保身に走らないように。

哲人 カウンセリングも同じです。われわれはカウンセリングをするとき、相談者を「依存」と「無責任」の地位に置かないことに最新の注意を払います。たとえば、相談者に「先生のおかげで治りました」と言わせるカウンセリングは、なにも解決していません。言葉を返せば、これは「わたしひとりではなにもできない」という意味なのですから。

P.122

青年 わかっています。「自立」とは、自らの手で自らの価値を決定することである。一方、自らの価値を他者に決めてもらおうとする態度、すなわち承認欲求は、ただの「依存」である。そうおっしゃるのですね?

哲人 そうです。自立と言う言葉を聞いたとき、それを経済的な側面ばかりから考える人がいます。しかし、たとえ10歳の子どもであっても、自立することはできる。50歳や60歳であっても、自立できていない人もいる。自立とは、精神の問題なのです。

p.161

「自立」について改めて考えさせられます。

哲人 いいえ、見事にまとめてくださっています。ただ、ひとつだけ補足させてください。すべての悩みが対人関係であるのなら、その他者との関係を断ち切ってしまえばいいのか? 他者を遠ざけ、自室に引きもこまっていればいいのか?

 それは違います。まったく違います。なぜなら、人間の喜びもまた、対人関係から生まれるのです。「宇宙にひとり」で生きる人は、悩みがない代わりに喜びもない、扁平な一生を送ることになるでしょう。

 アドラーの語る「すべての悩みは、対人関係の悩みである」という言葉の背後には、「すべての喜びもまた、対人関係の喜びである」という幸福の定義が隠されているのです。

P.177-178

『嫌われる勇気』で語られた前半に対し、本作で後半を語り完結させているということですね。

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青年 それのなにが悪い! 仕事で認められること、すなわちそれは社会から認められることですよ!

哲人 違います。原則論から言えば、仕事によって認められるのは、あなたの「機能」であって、「あなた」ではない。より優れた「機能」の持ち主が現れれば、周囲はそちらになびいていきます。それが市場原理、競争原理というものです。結果、あなたはいつまでも競争の渦から抜け出すことができず、ほんとうの意味での所属感を得ることもないでしょう。

青年 それでは、どうすればほんとうの所属感を得られるのですか⁉

哲人 他者に「信頼」を寄せて、交友の関係に踏み出すこと。それしかありません。われわれは仕事に身を捧げるだけでは幸福を得られないのです。

P.211

仕事によって求められているのは「機能」であるとドライに言い切っています。やはり会社の人間関係では所属感を得られないのでしょうか。これについて、小田嶋隆という方が「敬語で始まった関係は敬語から外に出られない、敬語とは「感情を抑制する」目的で発明されたもので、敬語を介して会話している限りにおいて、二人の間には、真摯な感情が通わないのだ」という趣旨のことを言っているのを思い出しました。

哲人 自立とは、経済上の問題でも、就労上の問題でもありません。人生への態度、ライフスタイルの問題です。……この先あなたも、誰かのことを愛する決心が固まるときがくるでしょう。それは、子ども時代のライフスタイルとの決別を果たし、真の自立を果たすときです。われわれは、他者を愛することによって、ようやく大人になるのですから。

P.250

フロムはこんな言葉を残しています。「誰かを愛するということはたんなる激しい感情ではない。それは決意でり、決断であり、約束である」と。

P.266

これは単にパートナーがいるとか、結婚しているとか、子どもがいれば実現されるものでなく、不断の決意によるものだということでしょう。